同じ人として
- 公開日
- 2014/02/24
- 更新日
- 2014/02/24
校長室より
もう20年近く前、私が3年生の担任していたときのお話です。提出物があまり出ず、掃除も遊ぶわけではありませんが一生懸命にはほど遠い、合唱をしていてもほとんど口を開けない、といって髪の毛にワックスを塗ってきたり、学生服の下に赤いトレーナーを着てきたりということもない、いわゆる「ぐうたら」という言葉が当てはまるような生徒がいました。
卒業間近のある日、その生徒は家庭学習のパーフェクト賞で昼放課に学習室で表彰されました。当時は、家庭学習パーフェクト賞は学年主任から表彰されていたのです。表彰されてうれしそうな表情をしているその生徒に「給食当番の後片付けもしないで、そんなにパーフェクト賞が欲しいのか。」とかなり強い口調で叱責しました。彼は反論もせず、ただ、下を向いているだけでした。
次の日、彼は、給食当番をしていませんでした。「どうして給食当番をしないんだ。」と問いただすと、隣にいた生徒が「こいつ、給食当番じゃないよ。」と教えてくれました。
よくよく話を聞くと、昨日は給食の準備が遅かったので自主的に手伝ったとのことでした。私は、何とひどいことをいったのだろうと自分を責めました。「ごめん、勘違いだった。」と謝ると「先生、卒業前で疲れとるやらあ、気にせんでええよ。」と言ってくれました。私としては。「ばかやろう」ぐらい言われる覚悟でした。家庭に連絡してお詫びすると「うちの子、何にも言わないのでよくわかりません。でも、昨日、家庭学習のパーフェクト賞を3年間で初めてもらってうれしがっていました。」とのことでした。私は返す言葉が見つかりませんでした。「ぐうたら」と思っていた子が卒業を前にこんなにも頑張っている、そのことに全く気づけない自分がいる、おまけに誤解までして叱っている、それを「先生、疲れとるやらあ。」で許してくれる。彼の心の広さと自分のおろかさを痛感しました。先生だから上、生徒だから下ではなく、同じ人としてかかわり合う中で、教え教えられる、支え支えられる、助け助けられる、とても大切なことだと思います。
平成26年2月24日 全校集会にて 水無瀬中学校長 浅井大司