カウンセラーの窓(光陵だより4月号より)
- 公開日
- 2011/04/28
- 更新日
- 2011/04/28
サポートセンター・カウンセラー
桜も散り,新緑の美しい季節になりました。でも今年はそれを素直に楽しむ気持ちになれない人もいるのではないでしょうか?
3月の突然の大地震により,多くの都市や集落が壊滅的な被害を受け,また亡くなった方や多くのものを失った方がいます。そういう方たちが失った日常を取り戻していくためには,長い時間が必要でしょう。被災された方々にはこの場を借りて心よりお見舞い申し上げます。
一方でそういう実際に被害にあわなくても,津波や映像や写真をくり返し見ることで間接的に喪失を体験することでも,心はダメージを受けてしまうことがあります。あの映像を何度も見ていて無力感や不安,気分の落ち込みを感じた人もいるかもしれませんが,それは自然な心の働きなのです。だからあの当時ニュースを避けて,アニメなどを見てしまったことに罪悪感を持つ必要はありません。むしろ心が健康で,危機を避けるために正常に働いていたといえるのです。
心というのは実際の体験と間接的な体験をあまりはっきりと区別しないという性質があります。だからマンガを読んだり,映画を見たりすることで,まるでそれを自分が体験しているかのように泣いたり,笑ったりできるのです。特に映像の影響力が大きいというのはみなさんも実体験として理解できるのではないでしょうか。
誰でも当たり前のように自分のことは自分が一番よくわかっていると思っています。でも人の心は知識や理論だけでは理解できない,つかみどころのないところがあるのも事実です。また何か危機的なことが降りかかったときに,その不可思議な正体の一部を見せてくれるといえるでしょう。
(スクールカウンセラー 永田美恵子)