徒競走 (3)
- 公開日
- 2012/10/05
- 更新日
- 2012/10/05
学校行事
私が教員になった頃、先輩から「東井義雄さんの詩はとっても良いから読んでみなさい」とすすめられました。
運動会のシーズンにぴったりの詩を紹介させていただきます。
トップでゴールした子、転んでしまった子、最後の最後に負けてしまった子・・・それぞれにドラマがあるんですね。
走
東井 義雄
スタートラインに立った子どもの姿というのは
美しいものだな いいものだな
つゆをふくんだ バラのつぼみのように
美しいものだな
ここには 勝ちほこったごう慢のかけらもない
敗残者の失意も卑屈もない
謙虚さと少しばかりの不安さと
露をふくんだようなみずみずしい希望と
未来にいどむもののたくましさが
ひとつになって
ひとりひとりのなかで燃えている
スタートラインに立った子どもの姿というのは
いいな 美しいな
走っている子ども
最高に燃えている姿がこれだ
走力のちがいによって
一番あり 二番あり 三番があり…六番もある
でも それは 燃え方の 序列ではない
一番も二番も三番の四番も五番も六番も
みんな 最高に 燃えている 火の玉だ
火は やっぱり 美しい
ああ あのビリッコの男の子は ニヤリ
決勝線十メートル前の ところで笑った
みんなのビリッコを見る目に
抵抗しているのだ
へっちゃらだぞと
抵抗しているのだ
でも あれは
ビリッコの 経験者以外には わからない
悲しみの 深さの表現なのだ
怠けている ふざけているなどと
思ってやっては ならないのだ